体内に糸を残さない手術
ここで言う体内に糸を残さない手術とは、
体の中の血管を縫合糸を使わずに結さつ(結ぶ)する手術のことです。
糸を使わずに結さつするとは、
簡単に言うと、電気が通っている器械で、血管をはさんで、シールすることです。
体の中には多くの血管があります。
血管は臓器と臓器をむすぶ通路のようなもので、
その中に活動を維持するために必要な血液が流れています。
手術において目的の臓器や腫瘍などを摘出するときには、
そこに血液を供給している血管を切断しなくてはなりません。
切断すると血液がでてきます。いわゆる出血です。
切断するだけだと、中の血液があふれてきてしまうので、遮断しないといけません。
その遮断する方法としては、圧迫して血液がかたまるのを待つ、
人工物の糸やクリップで止める、電気的なシールシステムで止める、やり方が一般的です。
当院では主に、血管の結さつに電気的なシールシステム(Gyrus plasmaKinetic Surgical Generator)で止めるやり方を行っています。
このやり方のメリットは、
結さつするスピードがはやく、手術時間の短縮に結びつきます。
その他に、体の中に人工物を残さないことです。
体に人工物を残すことで組織の異物反応がおこることがあります。
縫合糸由来の肉芽腫というものがありますが、そのような心配も少なくなる利点があります。
それにより、術後の安全性が高まります。
部位によっては縫合糸で結さつしますが、
この場合も品質の確かな吸収糸(溶けてなくなる特殊な糸)などを使用しています。
特に、去勢手術で睾丸や避妊手術で卵巣や子宮の摘出をするときの血管の結さつに、
電気的なシールシステムで止めるやり方を行い、より質の高い手術をめざしています。
体内に糸を残さない手術の一例:猫の去勢手術時の睾丸摘出
1、睾丸につながる血管と精菅
2、電気的なシールシステムによる血管と精菅のシール
3、シールされた後
4、シール部の切断
5、切断後:しっかりシールされ出血はみられない
その他の止血器械
バイポーラ(微小血管の凝固止血をする電気的なピンセット)
サージカルシザーズ(微小血管の凝固止血および組織の切開をする電気的なハサミ。)
サージカルシザーズを使用し、皮膚を切開しながら微小血管を凝固止血しているため出血が少ない。
さいごに
麻酔モニターにより手術中の動物を監視し、無菌手術をおこなっている院長
手術を行うにあたり、私たちは不測の事態の発生をできるだけ回避するとともに、
異常事態を可能な限り早期に発見し、適切な対処を迅速に行なうよう努めます。
ご不明な点、お困りのことがありましたら、何なりとご相談ください。
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